あの時、夕日に染まった泰衡の横顔は悲しく、それなのに愛い。
泰衡は若すぎるのだ。
この世に来て30年も経たず、「生」の楽しみも苦しみも味わい始まったばかりの子が歴史にある自分の役割を果たせねばならないのが、残酷すぎる現実だ。

だが泰衡はその役割を受け止めた、自分の「死」も、義経の「死」も。
その瞬間、彼の目に輝いた涙から、三日月は自分の役割を分かった。

形見として、骸として、千年見守って来た歴史をこの手で守る。
引き換えに手に入れたこの身で。

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